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瀞ホテルから、艇の所に戻って出発。
田戸の出発場まえの瀬を下る。パドルで瀬の深さを測ってみたが、せいぜい50センチくらいしかない。あのジェット船はこの浅いところを乗り越えていくのか。たいした船である。
瀞ホテルの脇は、川が急角度で曲がっている場所で、両側が切り立っているのでまったく見通しがない。ジェット船同士の衝突をふせぐためか、岸の上の方に信号があった。川に信号のあるのはここだけだとか、これもジェット船の走る北山名物である。

艇をあつめて記念撮影。


ジェット船の来ないうちと漕ぐ。この辺はだいぶ瀞で、岸から全くアクセスできないためか釣り人もおらず、カヌー独り占め状態である。もちろんジェット船がやって来るまでだが。
ちなみに北山の釣り人は概してカヌーに好意的で今回のツアーでも文句を言われることはなかった。
考えてみると、あのごうごうたるジェット船が通るこの川で鮎が釣れるというのがから、カヌーが通ったくらいでがたがた言う他の川の釣り人はいかにおかしなことを言っているかと思った。


断崖の前をすすむ。



のんびりとした瀞の左右にそびえ立つ渓谷は、やがて終わって、視界が広がる。左手の岸にさっきのようなテントが並ぶジェット船の発着場があった。ジェット船がそこに着く。
大きな岸をゆっくり回ると玉置き口に到着。
ここにはミネラルウォーターを汲める所がある。ここでみんな水を汲んだ。
水くみ場の脇はオートキャンプ場になっていて、テントがぽつぽつ張ってあった。あとは、のんびりした家が高いところに数件、雑貨屋か、お土産屋か、という商店が一軒。


上陸地点、水くみ場、いろり小屋。


ミネラルウォーターの脇にいろり小屋があった。そこのおじさんが、数年前の台風の時はここまで水が来た、と、解説してくれる。だからこのへんの家はもう一段高いところに建っているのだという。確かに人が住んでいるような家はすこし高いところに建っている。ここまでくるとなると、だいぶ水があがったんだわ。
ここで、さっきのめはりずしの残りをいただいく。見ている間にもジェット船が行き交う。
だいぶ風がでてきた。それも向かい風である。
「めんどくさいからここでキャンプ張ろうか」
「ビールが観光地価格でしょ」
「風呂〜、俺を風呂に入れてくれ〜」
今日のキャンプ予定地は湯の口。温泉につかろうという予定なのである。
私はおととい深夜バス、昨日はキャンプで風呂に浸かっていないので、風呂にこだわっているのである。

出発。風がまだ強い。なに、そのうち止む、と、思っていたら川がUターンしていて、気が付いたら追い風になっていた。




ジェット船が轟音と共に追い抜いていく、また下流からあがってくる。
ジェット船が抜けた後はすぐに船尾を目指して漕ぐようにして、川の中央にでる。こうしないとジェット船の波が来て、下手をすると沈、でなくても、波に押されて岸に打ち上げられることもありそう。まあ、ジェット船の後ろに立つ波でサーフィンするのも面白いんだけど。
ジェット船の乗客のなかで、なぜか手を振る人がいるのでおつきあいして手を振る。みなさん、レジャーしてますね。

前になり、後ろになり、漕いでいたダッキーとポリの2人組を抜く。
この連中にNopさんは田戸でスプレーカバーを間違えられていたそうで、戻してくる。どうやらむこうも借り物のようでよくわかっていなかったらしい。
地図で見ると峯ひとつむこうはさっき出発した玉置口である。極端に川が蛇行しているのでこういうことになる。しかし、峯はけっこう高く、地図で見ないとそのことはさっぱり判らない。そういえば、さっきから追い風である。
川はふたたび折れ曲がり、まっすぐの河原が続く。また向かい風になった。

なんか、ゆっくりとしたペースでなかなか進まない。
なんでも、ミヤモトさんは前回来たとき、田戸から出発して、1日で明日のゴール地点の日足まで到着したそうだ。しかもそのときは小学生のお子さんがダッキーだったとのこと。Nopさんらが前回来たときのペースで今回漕いでいるのだが、今回のペースではミヤモトさんの1日分を2日で漕ぐことになっている。
「えー、落ち葉流してももっと早く着くでしょう」
しかし、落ち葉より遅い我々はゆっくり行って、瀞大橋到達は3時近くになっていた。瀞大橋の左岸には大きな河原が広がっており、テントも見える。その河原の下流の川にでくさんが上陸。
「トイレ行って来るって」
見上げると、護岸の上に「公衆便所」と大書きした小屋が見えた。
むこうにホテルも一軒見える。
待っているとでくさんがもどってきた。
「あのトイレ綺麗。で、隣のホテルの温泉は500円、8時まで入れるって。もうここでキャンプしよう」
「うーん、でも湯の口は本場の温泉でないの?」
「向こうに行ってもトイレあるか判らないよ。温泉も距離が離れているし」
しばしの会議の後、結局本日は早めに終了してゴールはここになった。


本日の上陸地点。あの瀞大橋の下流でございます。



河原の向こうの方にはテントを張った人がいる。先客が多い、ということは薪は・・・
「これだけテント張っていると薪がないかもね」
「では向こう岸で集めて来ようか」
カヌーがまだ川にあるうちに川を渡って向こう岸の河原に薪拾いをすることになった。
カヌーに無理して薪を積んで帰ってきたら焚き火職人のくごさんが大量の薪をテントを張った河原の薮の中から拾ってきたところ。なんだい、この岸にだいぶ薪があるじゃん。
「やっぱり流木の気持ちになってあつめなきゃ」
既に薪はだいぶあつまったのだが、まだ向こう岸にNopさんとぷうさんが残っていて薪集めをしている。
見ると、声の届かない対岸から、Nopさん艇が薪を満載して主人を残したぷうさん艇をロープで引っ張って漕いでくるところであった。ぷうさんは対岸にカヌーなしで残されている。
「あのままほっておこうか」
そういうわけにもいかないので、Nopさんの艇に空荷のぽから艇をつなげてぷうさん救出に向かう。

かくて、薪は嫌と言うほど集まった。


テント地全景。


トイレは、公園に立っているもので、グランドつきの公園にはあすま屋と、水道があった。トイレはけっこうきれい。男子トイレに「トイレットペーパーは備え付けてありません。女子トイレの入り口で販売しています。」という張り紙があった。入り口と行っても女子トイレの中である。どーせーちゅうんじゃ。

そばに立つホテルは「瀞流荘」というところで、「湯の口温泉までのトロッコ」があるという看板が立っていた。運転時間は4時まで。5時ちかくにぶらぶら行った我々はなんてもったいなことをしたと無茶苦茶悔しがった。
「でくさーん、どうせならここまでチェックしなきゃあ」
そりゃ無理である。普通は温泉宿にトロッコ電車があるなんて予想する人はいない。
このときに旅のお供に買った「Be-Pal」98年10月号「森林鉄道7路線完全乗車」という記事に、このトロッコの事は「湯の口温泉坑内電車」として載っていた。なんでも、炭坑のトンネルを湯の口温泉までバッテリーカーが走っているという。ツーリングで瀞大橋下に泊まるならここは絶対要チェックです。是非4時前に行きましょう。

それでもホテルの温泉は非常に気持ちよかった。ぷうさんの待ち時間にテーブルホッケーに興じ、マッサージ機で極楽気分。うーん、ツーリングはこうでなくては。

 
ただしい温泉地の過ごし方?



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