夏休み、タイの中南部を流れるクウェーヤイ(クワイ)川から下流域のクローング川にかけて90km、チャオプラヤー(メナム)川の最大支流ピン川を210km下ってきました。
タイの川は人々の生活スペースでもあるため、川の中からタイ人の生活、文化が見ることができ、興味深いツーリングとなりました。タイは治安もいいし、人はもっといい!。ぜひ皆さんもファルト担いで微笑みの国へ旅立ってはいかがでしょうか。

<クローング川>
 クウェエーヤイ川はクウェーレック川と合流して、合流点より下流がクローング川となります。クウェーヤイ川の合流地点から3km上流の街、カンチャナブリ―から90km下流の町ラーチャブリーまで三日間かけてツーリングしました。
 クウェー川は映画「戦場にかける橋」や「戦場のメリークリスマス」で有名です。ただこの川に興味を持ったのは、こういった過去の不幸からでではなく、昔、タイではこの川を竹で組んだ筏で下る風習があり、流域には虎がいるので筏の上で煮炊き、睡眠をとり何日もかけて今でいうツーリングをしたそうだ。虎のいた川、僕好み。だからツーリングしてみた。

クローリング川は雄大で景色が美しい川だった。




ダムをポーテージしていると、ライフルを持った人物が近付いてきた。
僕のことをとても警戒していたが、事情をはなすと打ち解けて記念写真までできた。ダムの警備員だった。




<ピン川>

 チャオプラヤ―(メナム)川は4本の支流の水を集めてひとつの川になる。すべての支流を調査した結果、その内の一本、ピン川が最も水量が安定していて水もきれいな事がわかった。さらに調べると、ピン川は上流域、中流域、下流域に分かれ、上流域は雨季にしか水がなく、地図が手に入らないことがわかった(国境に近いため)。中流域と下流域の
間に大きなダムがあり、このダムを超えられるか不明。同じくダム区間の地図は手に入らない。また、4月に中流域を試漕したところ堰堤が多く、水も少なくツーリングには不向きとわかった。そこで今回は下流域に当たるダム下のタークという町から210km下流のナーコンサワンまで、ピン川の下流域を漕ぐことにした。
 ピン川はタイで最もファルトツーリングに適しているように思えた。水はきれいだし、砂地のキャンプ地が無数にあり、釣りもできる。途中、1箇所石積みの堰があるがポーテージは容易。210kmを6日間で下った。景色もいい。

川沿いにあった高級レストラン。
ツーリング中、食べ物、飲み物はいっさい困らない。
もちろんビールも手に入る。



水牛がいた。
タイ語でカラバウという。
タイでは力強さの象徴だ。



ピン川の水質は大陸の川にしてはピカ一きれいだ。
タークにて。





<荷物および食料>
 カヌーは日本から持ち込み、現地で調達できるものはすべて現地調達、極力荷物を減らし、飛行機ではエコノミーの手荷物と機内持ち込みだけですました。
 ツーリング中も極力荷物の軽減に努めた。以前タイの川を下った経験から食料、水はどんな小さな集落でもあれば手に入るとわかっていたので、2回分の食料と水2リットルしか持たなかった。タイ人は自炊の習慣がない。水も水道水を飲まない人が多い。だから集落があれば必ず屋台があり食事もできるしペットボトル入りの水も手に入る。タイの集落は必ず川沿いにある。川と生活が密着しているからだ。
 結果的にクローング川では食料、水の入手はまったく苦労しなかった。ピン川は流域の人口密度が低く、やや捕球しずらいところがあったが、致命的なことはなかった。


<キャンプ>
 クローング川はキャンプ地を見つけるのに苦労した。気持ちのよさそうな川原はすべて
家が建っていたり、漁師小屋や船着場があり占有されているからだ。
 ピン川は砂地のキャンプ適地が多く心地いいキャンプができた。ピン川の五泊目、夕方からスコールにおそわれた。こぶしのような雨、テントがひん曲がるほどの強風。どれほど増水するか見当がつかなかったので、日の入り直前い川原から上がり、民家に一泊させてもらった。


<危険および治安>
 危険ランキング

  No1 野良犬

タイはいたるところに野良犬がいて、飼い犬かそうでないか見分けさえつかない。状況はバンコクだろうと、田舎だろうと変わらない。タイは狂犬病常在国。タイ犬はよそ者には容赦がない。何度も襲われた。こんなときは近くにいるタイ人に助けを求めよう。餌をやっている人の一括で襲うのをやめる。

  No2 荒くれドライバー

タイ人の運転は荒っぽい。全員暴走族。チェンマイからタークにバスで移動する時、友人がしょっちゅう事故を起こすバス会社を教えてくれて、絶対に乗るなと忠告してくれた。歩行者の立場は極端に低い。この国ではドライ―バーが神様だ。うわさによると、運転者は三人までひき殺しても罪を問われるないらしい。何度も車やバイクに轢かれそうになった。

  No3 ヘビ

雑木林のなかでタイコブラに遭遇した。情報収集の段階でコブラの存在はつかんでいたが、本当に遭遇するとは思わなかった。後ずさりして逃げた。

  No4 繁華街

日本と同じで繁華街には繁華街の危険がある。タイの酔っ払いはけんか好き。君主危うきに近寄らずだ。繁華街では日本人食い物にされやすいそうだ、注意、注意。
チェンマイの前に行ったことがあるパブが三週間営業停止を食らっていた。客が撃たれて死んだからだそうだ。痴話げんからしいが、そんなので殺されるとはねェ。タイ人は面子をつぶされると暴走する。変なトラブルに巻き込まれないように。



<健康>
 健康上の問題は特になかったが、しいて言えば、絶えずお尻が濡れていたのでおサルのように尻がただれ、チクチク痛かったことか。クローング川ではダニとノミにたかられた。
蚊はどこにいても襲ってきた。テントを持参したがカヤの代用みたいな働きをこなしてくれた。


<情報の入手法>
 地図は国軍地理省で入手できる。技官は英語が話せる。ちょっとしたアドバイスは受けられる。
 TAT(ツーリストインフォメーション)ではリバーツーリングの情報は皆無。行くだけ時間の無駄。
 いかなる人よりもリバーツーリング上、的確、正確、重要な情報を提供してくれるのは川漁師だ。普通のタイ人に「〜まで何キロか」と聞くとすべての人が不正確なことを言う。
国民的に距離感覚や地理感覚が疎い。ところが川漁師は正確なことを言うし、おまえの船なら何時間とか言われ、それでもってそれが正確。先にある危険や注意、カヌーが走行できるかまで正しい情報を提供してくれる。川の中で最も信頼できる人物は川漁師だ。


<交通(移動手段)>
 タイ国内は飛行機、電車、バスで町から町へ移動する。飛行機は大きな町から大きな町へしか飛んでいない。値段は高い。行ってすぐ乗れるわけではないので実用的でない。電車は安く、3等車でも連結部近くにファルトザックのなど大きな荷物を置けるスペースがあって便利だ。バンコクからカンチャナブリーまで3等車、3時間乗って25B(75円)
だった。
 長距離バスはボーコーソーという公共会社が全国津々浦々までバスを走らせている。ちょっと大きな町ならバンコクから直通が必ずある。普通(エアコンなし)、エアコン、VIPというランクがあり、VIPはやや割高感があるが、客は少ないし軽食、飲み物もつき快適、一度乗ったらランクを落とすことはできない。バスはどてっ腹に大きな荷物入れがありファルトが乗らないなんてことは1度もなかった。


<フジタカヌー考>
 僕はカヌーメーカーの中でフジタを最も信頼し最もいいカヌーと信じていたが、今回のツーリングではカヌーのトラブルが非常に多く大変だった。今回ツーリング期間が長くなりその間絶えずカヌーが濡れている状態が続いた。そのためウッド部分が水を吸い金具(ジョイント)ごとボリッと折れたこと2回、熱処理で加工されているデッキの船体布が20cmはがれ水が入り放題。また吊り下げ式でないシートのためどうしてもお尻の位置が低くなり絶えずお尻が濡れお尻の皮膚がただれ、大変苦痛だった。