ツツジ香る錦川

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天気はうすぐもり。ずっとこんな感じの天気でゴールまで続いていた。明日には雨という予報もあるので、この日が雨でなかったことに感謝。
川に出て思ったこと。水がすばらしく綺麗。たしかに四万十川よりもきれいである。四万十川より小ぶりの川ではあるが、本当に底まで見える。
トシさんが魚が見えるよ、を繰り返した。偏光レンズが重宝するようだ。目が慣れてくると、レンズなくても岩影をさっと動く魚がけっこう見える。

しかし、底が見えるのはもう少し理由があった。このへんは底が浅いのだ。景色と、水の底に見とれて、瀬音以外では反応しない私はバレントが座礁してから気が付いた。浅い〜。インフレータブルのトシさんはその隙にとどんどん先にいってしまう。
座礁して歩かなければぜんぜんラクに追いつけるのではあるが。
だいぶ何カ所も歩いた。そのあと学習した。よめさんと浅瀬を読む練習をする。その甲斐あってかしばらくすると歩かなくても済むようになった。が、そのときまではもう浅くなくなっていたのではないかと思われる。

こいのぼり

河原かかるこいのぼり。



さて、南桑の駅が見えてくる。はじめはここから下ろうとしていた駅である。
こどもの日のこいのぼりがふた竿たっている。ツーリングの準備をしているファルト艇が数隻いた。挨拶だけして通り過ぎる。Outdoorに掲載されたのでもっとカヌーで混雑しているかとおもったが、そんなことはない。トシさんが言うにはOutdoorは関東圏がメインだからここまで遠征しては来ないんじゃないか、ということである。現に、三重では雑誌自体をさっぱり見かけないとのこと。

さらにくだっていく。けっこう流れがあるのでそんなに漕がなくても進むのだが、一応は漕ぐ。
漕いでいて思うこと。この川は香りがある。川岸が、本当にピンクに染まっているほど、野生のツツジが咲いているのである。この香りが川を埋め尽くしているのだ。川いっぱいの香りのする川ははじめてだ。ピンクのツツジはずっと岸辺のちかいところを埋めていた。

つつじ

つつじのなかを進むトシさん。


香りで満たしているツツジが、川面に、花のまま流れている。つつじは、はなびら一枚一枚ばらばらに落ちないで、花がその形を保ったままそっくりそのまま水面に落ちて流れていく。ピンクの小さな帆掛け船がひとつふたつ流れていくようだ。

さて、今朝出発したキャンプ場に到着。トイレ休憩になる。ほかに2組いたキャンパーはまだテント撤収中であった。

出発前にさっとカヌーをだして、錦川遠景の山をバックに流れていくつつじの花を撮影した。きれいに写っているといいなあ。

はな

これがそのときの写真。まんなかのピンクが花。
ワイドレンズならこんなものでしょう。


岸にあがると、ごーっと音がして、対岸の線路に黄色い機関車が走ってくるところである。トシさんと並んでカメラを構える。と、機関車が高らかに汽笛を鳴らした。2回。
なにかと思ってよくよく見ると機関車の窓から運転手が手を振っている。
「サービスいいねえ」
トシさんとふたりして機関車に手を振り返したのでありました。
ほんと、平和な田舎のワンシーンである。

機関車

汽笛でサービスしてくれた機関車


キャンプサイトを出てからしばらく、きれいな川の景色が続く。
どこも河原は気持ちよさそうなテントサイトになりそうである。
「ここがOutdoorのツーリングのときに使ったのかなあ」
それっぽい河原はいくつもあるので、特定が難しい。水さえもってくれば、どこでもいいサイトになりそうだ。

見ると、川面で動くひもがある。川を横切る蛇だ。
蛇って陸上を進むときは体を左右に振ってにょろにょろ進むが、水の上でも同じとは知らなかった。陸上と同じ動きをして進んでいく。
「しまへび?」
「まさかマムシじゃないよね」
カヌーで距離を置きながら眺めるが、頭は三角ではない。しまへびのように見えた。トシさんと写真を撮る。本当にこうやって泳ぐんですね〜。蛇はカヌーの人間を無視してまっすぐに川を横切ると、そのまま川岸に上がって、そのままにょろにょろと陸を進んでいった。

へび

川を横切るへび(画面中央のひもみたいなやつ)


鳥もずいぶん多い。ゴイサギ、チュウサギ、トンビ。
それに、ほーほけきょのウグイスがやかましいほど声をだしている。岸辺の竹薮のなかにいるようだ。

行波の駅がみえてくる。というより、集落である。集落が見えてきて、地図を確認すると駅だと言う構図である。
そろそろ昼飯どきである。
よくよく地図をチェックすると、トイレがあるのはここが最後である。次は錦帯橋だ。
まあ、いっか。というわけで、どーせなら「難所」のところで食事にしようということになる。

やがて、錦川最大の難所に到着する。川が左に折れている場所で、手前の河原に難なくカヌーをつけることができるので、下見は必須である。
カヌーをつけてから難所を見に行く。川が曲がる直前にちょっと瀬があり、そこでスピードがついたまま、川の右からかぶさってくる竹薮に直進することになる。テクニックがあって、瀬を降りた直後にイン側に入ることができれば、抜けることができそうだが。ちょっと全長5メートルのバレントでそれをやるつもりはない。

われわれはこの河原で昼食にすることにする。
さて、昼食の荷物を取り出す。最近は、カップラーメンとコンロに水持参で温かいラーメンをというパターンがお気に入りである。が、荷物を出す段になって、不意にいやな予感がした。ドライバッグをばっと開ける。なんだ、ちゃんとあるじゃん。
横からちょっと不安そうな嫁。「どしたの?」
「いや、湯沸かし用の鍋をいれ忘れたんじゃないかと思ってさ」
「・・・・・忘れた。」
沈黙。
私があったと誤解してほっとしたのはシェラカップの底であった。絶句。
仕方がないのでシェラカップで湯を沸かすことにした。結構何とかなるものである。カップで2回沸かすとカップラーメン一人分である。
ラーメンはけっこうおいしかった。

錦川最大の難所はライニングダウンして通った。