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漕ぎだしてすぐのところに瀬がある。先ほど水量不足でひやひやした瀬だ。これを下ると、さっきの筏の下船場があった。ここでは、下まで流れ得来た筏舟をクレーンで道のあるところまでひっぱりあげている。なかなか下から見上げると豪快な荷物である。
筏くだりで使った筏を岸までひきあげるクレーン。これは陸上側からみたところ。
このクレーンをすぎると、北山川の景色がひろがっている。まさに絶景。
出発地の直後。
川の両側は断崖絶壁が続いている。今日のキャンプ地ちかくまで上陸する場所はないそうだ。まさに渓谷の川。今、谷の間をカヌーで下っているのだ。
まさに絶景である。こんなところはなかなかカヌーでは下れない。両岸の絶壁が水際までせり出してきてこの一部分だけ見れば海のような景色である。
「それとも、亀山湖に似ているかねえ」
「規模の小さな亀山湖ね。」
左右が切り立っているところは似ているかもしれないが、まったく違う景色である。
出発してしばらくのところにダムの放水路あり。接近注意。
さっき、車で立ち寄った、筏くだりのレリーフがある休憩所がはるか高いところに見えていた。それ以外に人工物は見えない。休憩所も、はるか遠いところにあった。
休憩所下を越えると下滝の瀬。
大岩の間を通ろうとすると、せまくって通れないという場所である。
とにかく、左寄りを行こうということで、一列になって突入。
私はでくさん、ぷうさんのあと、3番目に瀬に突入。かなり波の高い、大きな岩がごろごろした瀬であるが、まっすぐなので、それほど危ないということはない。
しかし、瀬がだいぶ長い。思ったより長い感じがした。
前を行くぷうさんがもっと左に寄れと合図を出す。
だいぶ水をかぶる。けっきょくキャンペットのスプレーカーバーは水がどんと当たるとすぐに外れるのでカヌーの中は水浸しである。
ってなわけで、みんな全く無事にクリア。
結局私は最後までどの岩がカヌーを挟んでしまう岩なのかは良くわからなかった。
「長い瀬だねえ・・確かにはじめの方でこけたら面倒な話になるかもね」
「沈したままで、この流れを降りてきたら最後まで回収できんしねえ」
そのあとも、気持ちのいい瀬が繰り返した。
どの瀬もそれほど怖いということはない。気持ちのいいフィールドである。
流れが弱くなってきたころ、妙な形の大きな岩にみんな集まる。
ここで前回、みんなして飛び込みをしたんだという。
と、いうわけで、Nop、でく、ミヤモトの3人が艇をとめて岩に上がる。よーやる。
「ぽからさんやんないの〜」
「いやいや、○×△・・」
高いところは苦手なので、私はこういうことは固辞。眼鏡はずして岩に上がるも嫌だし。写真撮影班にまわった。
じゃーんぷ!!
3人が続いてひとりづつ飛び込んだ。さっぱーんと大きななみしぶき。
最後にとびこんだでくさんが浮き上がってきて叫んだ
「あ、眼鏡がない」
派手に飛沫を立てたので、眼鏡バンドごとふっとばされたようだ。浮力体付きの眼鏡バンドなら良かったのにというが、後の祭り。ちなみに浮力体付きの眼鏡バンドってあるんですねえ。
眼鏡を川底に落とした場合はコンタクトレンズを落としたときと同じくらい大騒ぎである。ましてやでくさんは車のドライバー。
さっき飛び込んだ3人はシュノーケルをつけて素潜り大会になった。
ちなみに、眼鏡がないと役に立たないぽからはシュノーケルが付けられないのでこういうときも役に立たない(^_^;)。
30分ばかりもぐりをくりかえす。水は澄んでいて、シュノーケルでもぐるなら水底は見えるという。でも、切り立った崖が水底に入っていってその隙間にあるのならわからないねという。
結局、眼鏡は見つからなかった。でくさんはくごさんの予備の眼鏡をで借りる。
その下の瀬を越えると大きな瀞。ここまでジェット船が上がってきて、方向転回するのだという。既に夕方になっているので、渓谷は静か、静か。
前回ひと月まえより滝がすくないという。滝の流れがどこもちょろちょろであった。
「キャンプサイトに薪ないかもね」
ということで、谷にあった流木をあつめてカヌーにくくりつける。
ミヤモトさんの艇はトナカイのより大きな角をつけることになった。
やがて、本日のテントサイトに到着。今回のルートでやっとお目にかかった大きな浜という感じの所である。2万5千図にはちゃんと記入されている浜だ。他には上陸できそうなところは少ない。
到着したキャンプサイトから。渓谷のなかに取り残された浜である。
「その上流側に区切られた場所がトイレね、テントサイトは奥」
奥にあった浜はけっこう大きかった。もう少しこの下に行くとジェット船乗り場という。でも、ここからは遠くに人間用らしき小さな釣り橋があるだけでほかには人の影、人工物というものが見あたらない。
「Nopさんが前に作ったモニュメント、残っているじゃん」
浜の上に妙な石の山と角のような木。前回来たときにNopさんが作って残して置いたんですと。
「いいところだねえ」
中位の石がごろごろした浜は水面から数メートル盛り上がっていて、なかなかいい感じ。でも斜面の所が多いので、みんな早いもの勝ちで場所取りしてテントを張る。
焚き火の薪もくごさんが茂みに入り込んでたくさん拾ってきた。さすが、北関東焚き火クラブ。焚き火は手慣れたものである。
カヌーに一切合切を積み込んだツーリングだというのに、6人中3人が通常サイズの椅子を持ってきていた。「これは必須でしょ」ガタパルトチェアならカヌーに積めるという。キャンペットではきっついなあ。
夜、渓谷から見上げる空は、右と左に山を従えて帯状にのぞいていた。都会では見えない天の川がぼやっと輝く。
「あ、流れ星」
「あ、お願いしないと」
「遅いって」
「一番効率的にお願いができる言葉ってなんだろう」
「金金金でしょ。」
飲み会も盛り上がったころ、深夜バスの私はかんっぺきにお小ちゃまモードになってしまい、テントに逃げ込む。
「あ、これからマシュマロでるのに」
「うーん、悔しい、でも眠い」
深夜バスの疲れもあって、あっというまに眠ってしまった。