KOHO試乗レポートその1

文:城後岳弘@フジタ〜ズ


 北上川(廚川→日詰)、小本川(岩泉→小本)をKOHO(フェザークラフト社製)で下る機会に恵まれました。KOHOはまだまだ川ファルトとしては知られていないフネです。これからファルトを買おうと思ってる方、KOHOに興味を持っている方の参考になればと思い試乗した感想をユーザーの立場からレポートしようと思います。ちょっと辛口かもしれませんが、それもファルトを愛するがゆえ、お許しを。

 この艇のオーナーはAPPONさんです。APPONさんはこの艇は膝のホールドが悪く、さらに安定感が悪いので乗るのは勘弁ということでした。APPONさんはご存知のように御嵩長瀞でポリ艇でクルクル回ったり、ピョンピョン跳ねたり(ゴメン!ファルトの人間にはこいう風に見える)している、つまりファルトの人間に比べはるかにテクニカルなパドリングをする人です。また対極になるシーカヤックも好きでショップのレンタルでいろいろな種類のフネでツーリングしたりウェーブスキーを楽しんだりしている人。かなり広く性格の違うフネを乗りこなす人なのですが、KOHOは無理とのことでした。組むのも大変そう。APPONさんも1時間ぐらいかかってかな?。

 実際北上川で最初の1kmはAPPONさんがKOHOに乗ったんですが、初心者のように身体が硬く緊張しフラフラしてました。小本川での休憩時間にミヤモトさんも試乗しましたが「うぉー乗り沈しそうだ」といいながらかなり身体を強ばらせていました。僕も最初バランスをとったり、倒れそうになってブレス入れたりアタフタで情けない気分になりました。

 最初に乗るとき、なにこれ!、って感じでした。乗る時に沈しそうだったので、しかたなく、船底が水底に着いた状態で乗り込みましたがこの方法は船体布の損傷から避けるべきです。乗り込むときのコツは普通のファルトよりずっとずっと低い重心で、お尻を上から乗せるのでなく、横から乗せる感じ。まず片足を船の中にいれぐっと沈ませそれから尻を乗せ足を入れる。こうすればフネが浮いた状態でも乗り込めます。

 乗り沈しそう、漕いで安定感がないと言うのは横安定性の悪さが原因です。

カラー/ティール 全長/3.51m 全幅/55cm
重量/12.75kg 深さ/26cm コーミング内径/87×47cm

幅が55cmというのは他のファルトに比べかなり細いです。僕のフジタPS-1は72cmありますし、FRTも72cmです。ただ逆にいうと、細いからスピードが出ます。全長が短いですが4mクラスのファルトと引けを取らないスピード感です。スピードと安定感、どっちを優先するかです。慣れれば不安定な感覚はなくなります。

 重量もフネが小さいので軽い、表現するならば他のファルトを持ち上げるとき、両手でよっこいしょなのに、片手でよっこいしょ、あれ頭の上まであがっちゃった、みたいな感じです。ただ積載量は小さい。荷物の多い人はデッキにまで積むことになるでしょう。

>>の、ランチだけ持ってでかけるワンデイトリップ等にも十二分に
>>対応してくれます。ハル素材にヘビーハイパロン採用のフェザー
>>クラフトの名に恥じない本格派スモールカヤックの登場です。

A&Fのカタログのコピーです。ワンデイトリップとは良く言ったものです(^^:。日本の川のようにすぐ物資を補給できるところでは問題になりませんが、町が1週間漕がないとないなんていう大陸の川では使えません。海も同じ。日本の海なら問題ないでしょう。

 膝のホールドですが、幅が狭い上にエアチューブが内側に膨らむため、さらに狭くなります。そのため膝が内側に押され足が横に開かないで伸び気味になりホールドが悪い、また足が伸びぎみになることは安定感の悪さの一因にもなります。

 そこで足を入れてから、手で膝を外側に押しつけエアチューブに膝を食い込ませます。そうすればまあまあのホールド感。フジタ艇やファルフォークの膝固定には劣りますがFRTよりずっと膝が安定します。

 膝の固定は艇と身体の一体感、それとロール時に問題になりますが、両者とも僕は満足できるぐらいの(我慢できるぐらいの)ものだと思います。ロールはCtoC系です。スイープでは後ろに反れないので厳しいです。

 おそらくKOHOの基本設計はシーカヤックを目的にされたものだと思います。スピード出るけど回転性もいい。ハイパフォーマンス艇です。設計者の艇に対する思想は高くこれを商品化したフェザークラフト社の意識はたいへん高い。直進と回転、相反する機能を上手く折込み、上流域の急流から河口近くの静水、または海まで、オールラウンドに楽しめるのがKOHOだと思います。今までにないファルトということでファルトの新しい可能性を切り開いてくれるのではと期待します。

 ただ、一点難を言えばA&F社はショップに厚く、ユーザーに薄いです。ハッキリ言って
個人ユーザー(例えば中古で買った人)の扱いが悪い。この辺はフジタの対応を見習っ
てもらいたいものです。

 さて、もしKOHOを買うなら必ず試乗しましょう。その不安定な感じを納得して買うべきだしショップもちゃんとそれを説明すべきです。

 僕の考えでは、初めてファルトを買う人には操艇が難しいので勧められません。今までフジタ艇乗って日本中の川に行ったけど機敏な動きのフネが欲しいとか、ボイジャーに長く乗っていたけど物足りない、急流をポリ艇みたいにスイスイやりたいとかカヌーレースで川崎さんや服部さんに引導を渡したい若い人とかそんな人のニーズに答えられるのがこのKOHOではないでしょうか。

 KOHO試乗まとめ

1.ハイパフォーマンスカヤックである。回転性、及び波切り(スピード)がいい。
2.恐ろしく軽い。
3.設計者、製造元最高。輸入代理店はもう少し努力して欲しい(個人ユーザーを大切に)
4.ファルトの新しい可能性を切り開く艇かもしれない。
5.初心者には勧められない。限られた上級者向き。

 最後に、カタログの情報やコピーは全く信用できませんね。KOHOの組立時間は15分と書いてあるそうですし。波打ち際でのサーフィンやちょっとした瀬遊びを楽しむことが出来ると書いてあるそうです。カタログを作った人は実際にサーフィンしたり瀬遊びしたことがあるのでしょうか?。実際KOHOで海サーフィンしたり、ちょっとした瀬遊びは可能です。ただそれだけのスキルのある人は・・、日本で10人もいないのでは。

 上手く伝えられませんが、KOHO、すごくいいフネでした。確実にこの艇のニーズはあると思いますが、限られた層の人達でしょう。

もし、読みたい人がいれば、KOHOツーリング編も書きます。

 ながらくお付き合いありがとうございました<(__)>。


1999/6/9

城後岳弘@フジタ〜ズ