(4)



4

くば笠は今回も役に立っている。実は改良点が一点だけ。あご紐にコードロックをつけた。これでフィット感が全然違う。笠を飛ばされまいと抵抗する必要も少ない。五徳と笠をきちんと紐で結わえないと、ぐらぐらして安定が悪いから、これもきつく締めた。結果として今回はまったく笠に気を使う必要がなくなった。
前回は短パンのウエットだったが、今回はロングにした。理由は楽だからである。万一寒くなっても中に小便すれば暖かいはずだし、現地で船をバラすようなとき、ひざをつくこともあるだろうと思ってのことだった。これは結果的に非常によく、洋上撤収の際に、ひざをすりむくことなく、怪我を防止することに役立った。
小便はまったくする気も起きなかった。とにかく暑い。寒さもつらいことは前回承知だったし、出発直前まで雨模様だったからパドリングウェアをどうするか悩んでいたが、結局取った。本当は上半身もセパレートのウエットのほうが良かったかもしれない。結局速乾機能のあるTシャツと長袖シャツを着ていた。長袖を着るのは日焼け防止のためである。最初手袋までしていたが、やはりスピードを入れるときに握りが悪く、はずしてしまった。
メガネは度入りのスポーツサングラスだ。眼に故障があるので、紫外線を当てられない。人相はわからなくなるがスポーツサングラスは欠かせない。今回の新しい装備は、エアクッションだ。いすの背に置く。前回背中がひどく痛かった。同じ450乗りを見ると、背骨と船のデッキリブのあたる位置がくっきり赤くなっていた。これは身体に悪い。小型の浮き輪状のものを買ってきた。乗り心地は格段に良くなった。
船のボトムは前日、布を一生懸命接着剤で貼り付けた。しかしこれは間に合わなかったようだ。翌週にはぼろぼろとはがれてしまった。紙やすりで削った分、穴が増えてしまったようだ。しかし水はここから入ったのはむしろ少なそうだ。多くは、最初からあけっぱなしにしていたスプレーのところからざぼざぼ入ってきた。それだけではなく、デッキがずいぶん波に現れた。どうやら、デッキとボトムの境目からじゅわじゅわ入ってきているようだ。しまった、ここにも防水テープを貼っておくんだった。
防水テープはなかなか効き目があるようだった。ひと巻き1200円は安い。東急ハンズで手に入る。みかけは黒いガムテープとあまりかわりがない。しかしうすいし接着力も強そうで、なかなかよろしい。今回の補修で二年前のガムテは全部はがした。逆にいえば二年もガムテ補修で持たしたと言うことだ。別の言い方をすれば、それだけ船を使っていないということもいえるが。
前回も課題だったラダーは、今回ラダーからのラインをタコ糸にした。と言っても、木綿のタコ糸ではない。スポーツカイト用のラインだ。カイトのラインはからまってもほどけやすく、引っ張りに強い。よほど強い力でごしごしこすらない限りなかなか切れることは無い。束ねれば人を釣ることもできる。通常、カイトは風の力により50〜60キロの引っ張り力が出るから、ラダーのラインの強度としては十分である。下手に金属など使わないほうがよい。
足元の方は多少危険なのだが沈しないという前提で、肩掛けベルトで代用する。つまり両足にわっかを引っ掛けるのだ。沈した時には複雑な構造なので足が抜けなくなると舟に吸い込まれることになりかねないが・・ま、それはそれだ。一応はずす練習はした。本番ではどうなるか、それだけはやってみないとわからない。
座ってみないと紐の位置はわからないので、長さ調節ができるようにコードロックで止める。ただこれがちょっと欠点だった。コードロックを二つにすればよかった。ひとつでは十分に引っ張り力をカバーできないのかもしれなかった。
ラダーは一応機能していた。ただし、小さな連続する波の上ではなんの役にも立たなかった。ラダーが空中に完全に浮いてしまっているからだ。速度が出ないとラダーは機能しない。しかし小波の連続では速度を出すまでには至らない。結局方向を建て直すためには片漕ぎも必要だった。ラダーはけして万能なわけではない。波への入り方によっては妙な抵抗になり舟が振られることもあった。